Archicadでは多くのデータを扱う必要がありますが、モデルに埋め込まれたすべての情報を分析し、理解することは時には複雑になります。こうしたデータの一部は組み立て要素やオブジェクト、あるいはゾーンに関連した、パラメータあるいはプロパティであり、視覚的な情報ではありません。これらは検索が可能であり、また一覧表化することも可能です。
要素のIDや寸法、あるいはシリアル番号は見ることはできますが、単に見ただけではその中に格納された情報を想像することができないため、これらは視覚的ではない情報の良い例と言えます。
それでは、どうしたらこのようなデータを、コントロールがしやすく、内容をより良く伝達できるものに変換することができるでしょうか?例えば、検討中の地形形状をより良く読み取ることができるよう、地形の各部を傾斜角度によって異なる色で色分けし、コンセプトの作成段階における何らかの決定をより効率的に、より少ない労力で下せるようにするのはどうでしょうか?
この記事では、視覚的でない情報を理解しやすい図面に上書きするために、Archicadの
表現の上書き機能を用いる方法を説明します。説明のため、ここでは単純で実践的な例を使用します。非常に不規則で一部が非常に激しい傾斜になった地形/敷地を備えた、新しいプロジェクトを準備しました。コンセプト段階のデザインは、敷地を有効活用するために正確である必要があります。このため、傾斜の厳しいエリアはどこかを明確に確認できると非常に役立ちます。
異なる傾斜を持つこの地形の各部を、異なる色で色分けしたらどうでしょう?以下の図のように、異なる傾斜角の範囲に従って色分けすることは可能でしょうか?
https://archive.epa.gov/emap/archive-emap/web/html/slope.html
答えは「はい」、可能です!何を達成したいかすでに確認できましたので、ここでは明確なワークフローと、必要となるツールを設定していきましょう。
ワークフローとツールこのワークフローのための主な機能となるのは表現の上書きです。表現の上書きツールはArchicad 20で導入されました。このツールは2Dや3D設定を上書きして、すべての要素の色や線、塗りつぶしなどの表現を変更することを、ユーザーによって定義された基準で整理されたルールセットをコントロールすることで可能にします。このルールセットは選択されたどのビューにおいても適用可能です。
それではどこから始めましょうか?最初に、個別の平面屋根に変換されて別々の平面図になった地形、もしくはメッシュが必要です。これについては追加アドオンの[メッシュから屋根を作成]アドオンを使用します。デフォルトでは、[メッシュから屋根を作成]コマンドは、[デザイン]→[デザイン補助]メニュー内にあります。

メッシュを選択してこれを個別の平面屋根に変換すれば、カスタマイズされたルールを組み合わせた表現の上書きを作成する準備は完了です。
新しい表現の上書きセットを作成するには、[ドキュメント]→[表現の上書き]→[表現の上書きセット]と進み、
[新規作成]をクリックして、これを例えば「ランドスケープ」 と命名します。次に
[ルールを編集]ボタンを選択して、異なる傾斜角を持つ各屋根要素に異なる色を割り当てるカラーのルールを設定します。例えば、6%未満の傾斜角を持つ屋根要素は赤色のペンで塗りつぶし表面を上書きし、3Dの材質は赤色の材質ペイントで上書きします。6-12%と12-20%の傾斜角範囲についても、それぞれに異なる上書きカラーを適用するための新しいルールを作成します。

以下に示すように、作成されたこれらすべてのルールを新しい表現の上書きセットに追加します。

モデルに戻り、この新しい表現の上書きセットを2Dと3Dビューの両方において適用します。その結果は以下のようになります:

この敷地においてどこが傾斜の大きなエリアかが非常に明確になりました。
結論表現の上書きは、プロジェクトの発展や品質管理、および分析に関連するその他多くの日常的な状況に対して適用することが可能です。視覚的ではない情報と表現の上書きを組み合わせたこの方法は、BIMモデルの中の「隠れた」データを制御し、プロジェクト全体を通じてより効果的に伝達することで、建築家にとって非常にパワフルなツールになる可能性を備えています。