1週間前 - 最終編集 1週間前
*「AC29テクノロジープレビュー:AIアシスタントを使ってみて(その1)」からの続きです。
3. 法規参照について
建築法規の参照については「その1」でも書いた通り現時点では英国の法規にしか正式対応していないとのことですが、日本の法規について聞いてみたらどうなるんだろうと思い、試しにAIアシスタントに聞いてみました(▽画像)。
一見すると「お、ちゃんと答えられるんじゃん」と見えますが、質問した「施行令125条の1」は避難階における屋外への出口に至る歩行距離に関する条文なので、AIの答え(「防火区画に関する規定です」)は全く的外れです。
ただ、上の質問を投げる際に、曖昧な質問を解釈し直して答えられるかを試そうと思ってわざと不正確な条文番号(※実際には「125条の1」という条文はなく、「125条」が正確)を伝えたので、これを正確な言い方に修正して聞き直したのが後半です。しかし、AIの回答は前のものとほぼ同じだったので、やはり現状では日本の建築法規に関しては頼りにできないみたいですね。
ただ、完全にダメかというとそんなこともないようで、たまたまかもしれませんが一部のメジャーな条文についてはほぼ正しい答えを返してくれました。次の画像は「建築基準法第20条」について概要を聞いてみた結果です(▽画像)。
一部に妙な文字化け(ロシア文字?)がありますが、20条の概要としてはまあまあ正しい答えになっています😅。まあ、これくらいならAIアシスタントではなく別の外部ツールを使ったほうがよいような気がしますが…今後の発展に期待しましょう。
4. モデル要素のクエリ(フィルタリング、選択)
「その1」でも書いた通り、要素クエリについては従来の「検索と選択」でかなり細かい条件設定をしての検索・選択ができるため、AIアシスタントが効率化に役立つ場面(=「検索と選択」では対応できないような、複雑又は曖昧な条件による検索)がすぐには思い浮かばないのですが、とりあえず現時点でどんな感じなのかを試すために「屋内にある壁要素を全て選択して」と指示してみました。
すると、返ってきた答えは以下のとおりでした:
「申し訳ありませんが、要求されたプロパティの処理に関する問題が発生したため、屋内にある壁要素を全て選択することはできません。クエリを修正してください。」
そこで、言い方を「インテリア要素である壁要素を全て選択して」と変えてみたところ、返ってきたのは次の答えでした:
「インテリア要素である壁要素を全て選択します。
指定された条件に基づく選択要素の合計数は:0」
実際には、モデルの屋内には明らかに壁要素があるので、この答えは人間側から見たらNGです。
ただし「インテリア要素」というのはArchicad内では不正確な言い方で、厳密には「位置(プロパティ)が“インテリア”である要素」が正しい言い方です。なので、指示をこの言い方に書き換えて再度質問してみたところ、やっと正しい答えが返ってきました。
以上の一連の流れが次の画像です▽
また、最後の答えとともに平面図上で「位置」プロパティが「インテリア」に設定された壁要素が選択された状態が以下の画像です▽
ということで、現状でAIアシスタントのクエリ機能を正しく使うには、ユーザー側が言葉遣いをかなり正確にしないとうまくいかないようです。このことは、公式トレーニング動画の中でも言及されています(▽画像)
一見すると「まあそれはそうかもね…言葉遣いが雑でごめんなさいね😥」と思いますが、個人的にはこのようにユーザー側に言葉の正確さを要求する(=言語表現の曖昧さやケアレスミスを許容しない)ままだとAIとしての使い勝手は良くならないのでは?と感じています。
ChatGPTその他の汎用AIを日常的に利用しているユーザーなら分かると思いますが、今の最新のAIはユーザー側が多少乱暴な言い方や書き間違い、曖昧な表現をしても、それを解釈するときに適宜補正し、本来の意図をおおむね正しく受け取って回答を返してくれます。それによって、特に厳密さを要する場面を除くと、言葉の正確さに慎重になるストレスなく気軽に使えるようになっているのです。したがって、それに逆行するように「隅々まで正確な言葉遣いでプロンプトを投げないと正確な答えは得られない」というスタンスのままだと、どれだけそれ以外の面での機能が充実してもAIアシスタントの存在意義は薄いような気がします。
上に紹介したクエリの例で言えば、たとえ<位置>プロパティに「インテリア/エクステリア」の区別が入力されていない場合や正しく設定されていない(例:外壁要素の位置プロパティが「インテリア」になっている、等)場合などでも、AIがモデルの構成などから建物の内外を総合的に判断して「屋内の壁要素(であると考えられるもの)」を抽出してくれる、という感じにならないと利用価値がないということです。そもそも、ある程度Archicadを使い慣れたユーザーの場合、プロパティが既に正しく設定されているなら「検索と選択」ツールを使うほうが早いはずなので、「検索と選択」ではできないクエリ操作をAIがやってくれないと意味がないのではないでしょうか。
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以上、AIアシスタントを実際に使ってみての個人的な感想を具体例とともにまとめてみました。
全体的な感想としては、自然言語の曖昧さや表記の揺れをどれだけうまく処理できるかが、AIアシスタントの(クエリ機能の)今後の鍵を握っていると感じました。また、法規参照機能については、(まずは日本の基本的な建築法規への参照を正確にできるようになったうえで)主要法規に基づくモデルチェックをAIがサポートしてくれるような機能にまで進化してくれれば、ArchicadにビルトインされたAIとしての意義が明確になってくると思います。
すでに普及している様々な汎用AIツールの進化スピードから考えると、ArchicadのAIアシスタントもこれからかなりのスピードで進化していくのが期待できますが、これらの面で「ArchicadにビルトインされたAIとしての独自の進化」が見られるかどうかを注視しながら試用を続けてみようと思っています😁