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Archicad29 テクノロジープレビューの私的レビュー、4つめの投稿です。
これまでのレビューはこちらです↓
◯ AC29テクノロジープレビュー:AIアシスタントを使ってみて(その1)
◯ AC29テクノロジープレビュー:AIアシスタントを使ってみて(その2)
◯ Archicad29テクノロジープレビュー 新機能レビュー(AIアシスタント・MEP Designer以外)
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設備分野では最大競合の某BIMソフトに大きく遅れを取ってきた(※1)Archicadですが、ここ数回のMEPツールのアップデートで少しずつ基本設計〜実施設計前半レベルの設備設計実務に使えるところまで進化してきたように感じています。
※1 この点については単純に開発が遅れたというより「BIMモデリングをソフト単独で完結するのではなくOPEN BIMによって各分野の専門性の高いソフトと連携したほうが現実的かつ全体最適性が高い」というArchicadの基本思想があるような気がします。)
私個人は、住宅から中規模(〜5,000㎡前後)の非住宅が主戦場なこともあってBIM導入以前から設備設計もある程度のところまでは自前でやってきたこともあり、毎回のアップデートでMEP機能の充実に注目してきました。が、Archicad28までのMEPツールは実務でストレスなく使うには物足りないところが多く、できるだけ使うようにはしてきたもののの、どちらかというと「便利だから」というよりは最終的に使えるツールになったときに使いこなせるようにする準備として無理やり頑張って使ってきた感じでした😅
日本では活用しているユーザーがかなり限られている(と思われる)MEP ツールですが、今回は過去2回と比べても大規模なアップデートで複雑なので、MEP Designerの公式チュートリアルコース(※2)を通して受講して最新の使い勝手を体感してみました。
※2 @Rumiko Shimo さんのこちらの記事にリンクが紹介されています。
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アップデートの詳細については公式テクノロジープレビュー内の記事(和訳版)を見ていただくとして、
使ってみての個人的な感想をひとことで言うと、
「やっと実務でスルスル使えそう😙😂👍!」
(ただし、だからこそやっぱり排水枡オブジェクトが欲しいです…)
…というのが全体的な印象です。
今まではArchicad内のいちモジュールだったMEPツールが今回のアップデートでMEP Designerというスタンドアロンソフトとしても公開されるようになったことを見ても、設備BIMツールとして必要な機能と操作性が一通り揃ったことが分かります😉。
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改善点の網羅的な説明は上記リンク先の記事をみていただくとして、個人的に特に「いいね👍️!」と思ったアップデート箇所2つを以下に挙げます。
1. モデリングや編集、設定パネルの操作性が大幅に改善された
→ たとえばMEPの配管やダクトでもストレッチツールが使えるようになったり、ルート(連続する配管やダクトの)全体に一括して同一の保温材設定ができるようになったり
と、今までチマチマと手間がかかった部分が大幅に効率化されています。特に良いと感じたのは、
①配管の勾配入力や事後編集が簡単にできるようになった(当たり前の機能に思えますが、28まではかなり大変でした)
②最適な配管接続オプション(接続形状の複数選択肢)の自動提案
の2点です。
①では、特に排水管の事後的な勾配(再)設定が平面図上でサクッとできるようになったのが大きいですね。今までは細かい手作業でやるしかない操作だったので、平面図上に自動的に勾配が表示されるようになった(もちろん表示オプションでON/OFF切替可能)改善とも相まって、一気に便利になりました。私の場合、排水管は設計初期段階では勾配ゼロ(水平)でラフにモデリングしておいて、後々3Dで検討する段階になって勾配を付けることが多いので、非常に助かります。
②は言葉だけだとわかりにくいですが、例えば端末の衛生器具(例:水栓、便器など)と主管をつなぐ枝管をモデリングするときに、開始点(器具側)をクリックしてから主管基準線上の接続点にマウスオーバーすると複数の候補ルート(配管接続形状)が点線で表示され、ユーザーはその中から最適なものを選択するだけでよいという、なかなか画期的な便利機能です(▽GIF動画)。これまでは手作業でチマチマと接続形状をモデリングするしかなく、垂直・水平だけならまだしもそれ以外の角度での曲りなどが入ってくると3D上でのモデリングに骨が折れたので、私的には今回のMEPアップデートの中で最高🥇の改善です。
2. MEP要素表示の改善
→「1」でも触れた配管勾配のラベル表示と配管等の未接続箇所の強調表示(▽GIF動画)が便利です。なお、後者については28でも機能自体は存在したのですが、メニュー名の和訳が不正確だったのが修正されました(※3)
※3 AC28の表示オプションの中にInt版では(おそらく)「Open MEP connections」となっているメニュー項目があり、これは文字通り「未接続の(オープンな)MEP接続を強調表示する」ためのものだったのですが、今回のアップデートで「未接続のMEPを表示」という正しい和訳に修正されました。AC28までは直訳(?)で「MEP接続を開く」という誤訳になっていて意味が分からなかったので、今回はじめて「あ、そういうことだったのね」と理解しました😅。
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他にも、使いこなせれば便利そうな機能(換気計算機能や、ダクトサイズを最適化してくれるダクトサイズオプティマイザなど)があるのですが、これらはまだほとんど掘り下げられていないのでそのうち実際に使うことがあればまた報告したいと思います。ただ、この辺のデータ処理機能になるとどうしても日本の基準や計算ルールとマッチしないことがありそうな気がするので、そのあたりが実務で使えるかどうかの分かれ道ですね。
今回のアップデートでMEPツールの基本的な要素はほぼ出揃った感じがしますが、今後(日本語版独自の対応として)改善してほしい箇所としては、しつこいですが排水桝オブジェクトの追加と、国内の計算ルールに基づいた主要な設備計算ツールを使いやすい形でアドインとして実装すること…でしょうか。ユーザー数が限られるツールなので対応の優先度は低そうですが、住宅や中小規模の店舗・事務所などで設備設計を外注するほどではないときにArchicadである程度まで完結できるようになればユーザー自体も増えてくると思うので、MEP Designerのさらなる改善に期待しています🙌。